NPO法人江戸川手話通訳者協会会報誌『通研江戸公』第29号掲載

情報「保障」から「共有」へ

 
江戸川手話通訳者協会では、障害者自立支援法のコミュニケーション支援事業としての手話通訳者派遣と、企業やNPO団体などへの手話通訳者派遣という2本柱で手話通訳活動をしています。
 前者は江戸川区からの委託事業で、後者はその事業の適用外となる企業の社内会議や、民間が主催する有料のイベントや、パーティーなどへの手話通訳となります。

 コミュニケーション支援事業での手話通訳者派遣が認められる範囲は、病院の診察や、学校の入学式などの行事、マンション理事会の会議や、就職面接、冠婚葬祭など日常生活に直接関わることと限定されています。ところが、就職面接のときに手話通訳があっても、それ以降はコミュニケーション支援事業では手話通訳者の派遣を認めていないので、聞こえない人は社内でのやり取りは口話や、筆談となってしまいます。職場でのコミュニケーションはそれで十分だとしても、社内会議となると複数の人が発言する口元を目で追うのが精一杯で、自らの意見を言うことができなかったりします。議論が分からないまま進められ、決まったことだけが伝えられるということもあるそうです。

 当協会では、2003年頃から、企業で働く聞こえない人から「社内の会議に手話通訳を付けてほしい」という要望を受けて、企業に手話通訳者の派遣を行うようになりました。そうした場合の手話通訳者の報酬ですが、聞こえない人の自己負担ではなく、企業から報酬を受けています。企業からしてみれば、決して高額でないとはいえ、手話通訳者に対して報酬を支払うわけですから、そこには聞こえない人を雇用する企業の姿勢が見えてきます。

 聞こえない人をはじめ、女性や、高齢者といったマイノリティを企業が雇用する背景には、男女雇用機会均等法や、障がい者の法定雇用率が定められていること、また、新規採用を見送る代りの定年引き延ばしなど、あまり積極的でない姿勢もあります。

 アメリカでは、1964年に公民権法が成立され、人種差別撤廃や、マイノリティへの機会平等が掲げられ、雇用面でも機会平等が義務づけられるようになりました。とはいえ、当初は積極的に雇用するわけではなかったようです。ところが、こうした雇用の機会平等からマイノリティが経済力を付けるようになると、彼ら向けの商品が開発されるようになり、そこで成功した企業がマーケティングにダイバーシティの考え方を取り入れるようになったと言われています。

 ダイバーシティとは、外面の属性(国籍、人種、障がい)や、内面の属性(経歴、価値観など)の違いを指し、その違いにかかわらず、それぞれの個を尊重することを言います。
 あるデータによると、アメリカ社会は労働力が高齢化、女性化となるばかりでなく、白人男性の割合が47%から15%になり、21世紀半ばには白人がマイノリティになると予想されています (Workforce2000より) 。
 この変化予測を踏まえ、企業は女性、有色人種、高齢者、障がい者などを積極的に活用していく変化が求められています。


続きは本誌にてお楽しみください。