NPO法人江戸川手話通訳者協会会報誌『通研江戸公』第18号掲載

手話通訳者の手の位置


 誰が決めたか知らないが、手話通訳者が舞台上や、カメラに向かって、通訳が始まるまでの構え、いわゆる「待ちのポーズ」というものは、両手を組んでおへその位置に持ってくる。
 先日、行なわれた手話通訳士の試験なんかで、聞き取り手話通訳試験をする際、ビデオカメラに向かったら、両手をおへそ辺りに重ね合わせないといけない(らしい)。中には、おへそよりも高く、胃の辺りに両手を持ってきてしまう人もいる。これでちょっと斜に構えて微笑みなんぞ浮かべようものなら、モナリザのポーズになってしまう。もっとも、通訳のときはモナリザのごとく微笑んでいられるという余裕はなく、緊張で引き攣り笑いになってしまうこともあったり…。
 
 さて、この待ちのポーズ、日本特有のものではないようだ。ぼくが勤務する某TV局では、世界各国の放送を受信しているようで、少し前まで中東の放送局アルジャジーラTVを視聴することが出来た。このアルジャジーラTVはアメリカがイラクを攻撃したときに話題となったあの放送局だが、放送されるニュースには、リアルタイムでアラビア語の字幕が表示されていた。
 あるとき、生放送のニュースに手話通訳が付いているのを見掛けた。手話通訳者はアラブの白い装束で通訳をしていて、所変われば、黒い服装という拘りなんてないものなんだなぁと思いながら手話通訳を見つめていた。ふと気づくと、待ちのポーズのとき、両手をおへその位置で構えているではないか。なんだ。日本と同じだと思っていたら何かおかしい。何かに手を掛けているようなのだ。目を凝らして見ると、驚いたことに手話通訳者のおへその高さの透明のアクリル板が通訳者の前に置いてあり、通訳者は、そこに両手を掛けていたのだ。そこまでして、おへその位置に拘る根拠っていったい何なのだろう?
 
実は、この待ちのポーズ。ろう者にはすこぶる評判が悪い。デフジョークでステレオタイプの手話通訳者が描かれるとき、必ず、この待ちのポーズをし、手話を繰り出すときは口を金魚のようにパクパク動かす手話通訳者が描かれてしまう。つまり、ろう者から見ると、それほど不自然だということなのだろう。
 手の位置はおへそよりも下のほうが自然に見えるはずだ。なのに、なぜ、おへその位置になってしまったのか。誰か理由を知っている方があれば教えてください。


続きは本書にてお楽しみください。

・国リハ手話通訳士研修会
・手話通訳者の倫理観
・手話通訳者の使命
・手話通訳者の守秘義務
・地域のことを地域で(←この記事はお読みいただけます)