NPO法人江戸川手話通訳者協会会報誌『通研江戸公』第12号掲載

手話通訳者に期待されていること

今日は3つのことについてお話したいと思います。1つめは、「手話通訳者に期待されていること」2つめは、「聞き取りのヒント・読み取りのヒント」。どこかで聞いたようなタイトルかと気がついた人もいるかと思います。「教える」ではなく、「ヒント」となっていますから、ぼくがここで話すことも絶対だなんて思わないで、ヒントだと思っていただいて、あとは自分で消化していただきたいと思います。そういうわけで、2つめでは、いくつかの例を挙げて言語通訳のヒントを紹介したいと思います。最後に「手話通訳現場で思うこと」。通訳事例を通して感じていることをお話させていただきたいと思います。

 
まず、みなさんにお尋ねします。聞こえない人がいちばん使う手話通訳の場面って何ですか?「平成16年度派遣実績」という資料を見ますと、538件あるうち、「生命及び健康増進に関すること」が271件で断トツです。つまり、病院での手話通訳派遣がいちばん多いということですよね。ところが、資料1を見ていただきたいと思います。これは、白澤麻弓さんという人が2002年に開かれた日本手話学会での研究発表です。それによると講演会が断トツなのですね。これはどういうことか?調べた対象者が違うからか。そういうことではないと思うんですね。だいたいどこの地域でも変わらないと思います。これは、つまりこういうことなんです。手話通訳の派遣現場は医療現場がいちばん多い。だから、聞こえない人がいちばん使うのも医療現場だと思ってしまう。ところが、聞こえない人の立場からすると、講演会で手話通訳を利用することのほうが断然多いんです。それは、手話通訳を利用する人の中で、どんな場面でも毎回手話通訳を利用するということではなく、講演会では手話通訳を利用するが、医療場面では手話通訳を使わない人がいるということです。これは、いろんな理由があると思いますが、ひとつ確かに言えることは講演会の場合は不特定多数だが、医療となると1対1になるので個人が特定されてしまう。知られたくないことも通訳を利用すれば通訳者に知られてしまう。だから、ふだんは手話通訳を利用する人でも、医療場面では手話通訳を利用したくないという人がいるということです。

 手話通訳者として、もっとも自覚しなくちゃいけないことは、このデータから読み取れるように「知られたくないところ」に通訳者は足を踏み入れているということです。手話通訳活動によってプライバシーに関わる情報を知りえている。手話通訳者には医者や弁護士と同じように守秘義務がある。そういう自覚が大事だということです。


以下のタイトルは本書にてお楽しみください。

・聞き取りのヒント・読み取りのヒント
・手話通訳現場で思うこと