NPO法人の必要性は分かってきたが、それは手話通訳者として社会の中で活動するときに感じることであって、江聴協と合同で取得する必然性というものが今ひとつピンとこなかった。はっきり言うと江聴協自身がなぜ任意団体ではだめで、法人化が必要なのかという理由がその段階ではよく分からなかったのだ。なぜ、会計報告など多少面倒になるデメリットがあるにもかかわらず、法人化をしなければならないのか、その理由がイメージができなかった。さらに、合同取得でなくてはならないという。江戸川区では、それぞれの個性を発揮していた手話サークルがどうして一本化する必要があるのか? 当然、手話サークルからも強い反発があった。また、通訳者たちに、いくら将来的に好条件で事務所職員として雇うつもりだと言われても、その事務処理に追われて通訳業務ができなくなるのではという不安のほうが大きかった。また、何度と聞く説明では、情報センターとしての機能を担った江聴協の中で、手話通訳派遣の業務をやるという。しかし、それにはひとつの問題があった。守秘義務の問題である。「もし、あの事務所で手話通訳派遣のコーディネートをするとしたら、入れ替わり立ち代りにやって来る事務所ボラは、当然、事務所に来た通訳依頼のFAXを見ますよね。手狭な事務所ですから、とても守秘義務なんか守れないという不安があります」という声もあった。

いちばんの不安は事務所の作業に追われて、せっかく軌道に乗ってきた手話通訳事業ができなくなるのではということだった。元々、別団体として存在し、お互いがそれぞれの事業が軌道にのりかけているところだった(江聴協では「予備塾」という有料の手話教室。登通協では区派遣対象外となった依頼の通訳派遣が年間100件近くあった)。

もちろん、別団体と言ってもお互いは協力し合ってきた。こういう協力関係にありながら、江聴協では「日本手話の普及」、登通協では「区派遣対象外の手話通訳派遣」という異なった事業の専門性をさらに高めるためには、それぞれが独立して存在していたほうが良いだろうという意見が優勢になってくる。

  3、区派遣範囲外の通訳依頼   5、合同取得を再度断念する