手話を学ぶ聴者というのは、いくつもの顔がある。登録手話通訳者としての顔。それと同時に江聴協の活動をサポートする賛助会員としての顔(具体的には事務所のボランティアという顔)。また、手話サークルでの顔。その中で、いちばん優先されなければならないのは、やはり、登録手話通訳者という顔だ。しかし、当時は、先述したように通訳者の顔よりも、事務所ボラの顔が優先されてしまうことがしばしばあった。また、区派遣の活動範囲なのに事務所ボラが通訳依頼を受けてしまうという問題も起こった。江戸川区に登録をしている「登録手話通訳者」という顔がある以上、区派遣が可能な通訳依頼ならば、区派遣を紹介するのが本来の登録手話通訳者の姿だ。しかし、残念なことに善意からとはいえ、区派遣が可能な依頼内容を個人で引き受けてしまうというケースがあった。そういった問題をみんなで共有しあい、どういう姿が通訳者として相応しいのかということを登通協の定例会でよく話し合うようになった。

 こうして振り返ると、当時は50周年記念の準備に追われることが多かったので、事務所のボラという顔が優先されることがしばしばあった。まだ、顔を使い分けるということの自覚も足りなった。善意からとはいえ、個人で通訳を引き受けてしまうことが、結果として、区の手話通訳派遣事業の根幹を揺るがすことにつながるということまで考えて行動することを、みんなで共有することがまだできていなかった。しかし、そういう経験を経て、ようやく登録手話通訳者としての自覚が芽生えるようになってきた。

さらに、登録手話通訳者として「区派遣の範囲だから個人依頼を断る」というだけでなく、「区派遣の範囲外だから引き受ける」という行動も起きるようになってくる。


       1、NPO法人化        3、区派遣範囲外の通訳依頼