東聴連新聞19年5月号掲載内容について、当会に多くのご意見やお問合せがありました。
この新聞記事の内容は、私たちが認識している事実とは異なっております。
当会広報誌の中に、このことに触れた理事長エッセイがありますので、
ここにご紹介いたします。

NPO法人江戸川手話通訳者協会広報誌
『通研江戸公』18号(10月20日発行)
理事長エッセイ「りーくんのカプチーノを飲みながら」より抜粋


地域のことを地域で(抜粋)

東京都聴覚障害者新聞19年5月号にこのような記事が掲載された。

江戸川区は、行政及び地域の手話通訳組織が「区の通訳だけで対応できる」と考えているようですが、地域の聴覚障害者協会はそれを不服として「都と契約して欲しい」という署名運動を行なったにもかかわらず、区や通訳組織はまだ考えを変えようとしません。
(東京都聴覚障害者新聞19年5月号)


 記事によると、江戸川区の手話通訳者組織、すなわち当会が派遣センターと区との契約を拒んだために、都は江戸川区と契約を結べなかったと受け取れてしまうが、これは、私共が認識している事実とは異なる。

 江戸川区の手話通訳者派遣事業を管轄する障害者福祉課からは登録手話通訳者に対してなされた説明は、江戸川区は都と契約を結びたくなかったのではなく結べなかった。その理由は、通訳料に格差が生じることというのが主なものであった。
 江戸川区障害者福祉課では、手話通訳者間の活動謝金はベテランでも、新人でも均一額を支給するという方針でいる。おそらく、その考えは、どの区でも同じだろうと思われる。
 ところが、派遣センターは福祉課との契約交渉時に、活動謝金の均一額を拒否され、区の設定した金額よりも高い額を要求されたとのこと。結局、交渉はまとまらず、障害者福祉課は手話通訳者間に格差が生じる事は良くないとの判断から、止む無く契約を結ぶに至らなかったとのことだった。

 どのような情報源から事実と異なる情報を入手されたの分からないが、直接、当事者団体に事実確認をすることもなく、「通訳者組織が…考えている」と断定した記事を掲載したことを甚だ残念に思うのである。

 また、都講習会において、「一区一市が都と契約を結んでない」と度々、名指しをして批判されることがあると聞いているのだが、そういうことをされるのも如何なものかと思う。そのご批判が直接、当会や、あるいは、派遣センターとの契約を結ばない決定をした江戸川区に対して向けられるのならまだしも、都の講習会に通う受講生たちに向けられることは、その場に相応しい言動とは到底思えないのである。

 さらに言えば、コミュニケーション支援事業とは、派遣センターとの契約を区市が選択できることではなく、強制されることなのだろうかと問いたい。各区市が派遣センターと契約をするということは、石原都政の福祉予算削減の皺寄せを区市の福祉予算が肩代わりするということになりはしないだろうか。

 もちろん、派遣センターがなくなっても構わないと考えているわけではない。地域によっては、地域の登録手話通訳者派遣だけでは担えない所もあるかもしれない。かつて、全通件東京支部の学習会において、地域の登録手話通訳者派遣事業は「脆弱な制度だ」と指摘された通り、地域の登録手話通訳者は職業としては成り立たず、パート労働する必要ない富裕層の家庭の主婦が大部分によって支えられているという不安定な制度であることは事実だ。
 だから、コミュニケーション支援事業が地域の制度では担えないという区市に対しては、派遣センターが契約を結ぶという選択は妥当なことだろう。
 ただ、このコミュニケーション支援事業に薄謝を顧みず、脆弱な制度ながらも、地域の活動に誇りを持ち、「共育・協働」の理念のもと、地域のことを地域で取り組もうとする江戸川区の選択を応援していただきたいと願うのである。

 現在、江戸川区で登録手話通訳者として活動している者の大部分は、東京都手話通訳等養成講習会を修了し、地域の登録手話通訳者として頑張っている。都の手話講習会では、そこで学んだことを地域に還元するために、地域の登録手話通訳者となって活動する大切さを教わってきたからである。

 江戸川区が派遣センターと契約を結ばなかったということは、私共にとっても予期せぬことだった。
 しかしながら、そうなった以上は、地域の登録手話通訳者たちが頑張るしかないという思いで懸命に活動をしているということをご理解いただければと願っている。



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